~「お知らせ」・・ここから第2部です~
このブログは、「学習論」・「組織論」の2つになっております。私が、この2つを同時に考える方が自分の思考力が増すと思うのでそうしていますが、皆さんは、適宜どちらかを選んで読んでください。
「学習論」は中高生を思い浮かべて書いております。小学生でも、5・6年生ならもしかしたら理解できるかも知れません。・・分かる範囲での参加をしてみてください・・(分からないからと言って全部捨てるのではなく、分かることだけを拾って学習するのが成長の道です。次第に分かるようになります。)
また、この「組織論」は、大学生以上の大人の方を読者と想定していますので、高校生でも挑戦しようと思う人以外には難しいかも知れません。
なお、多くの方々は、この第2部から読んでください。第1部は「理論編」となっていますので、それなりの研究意識がある人への対応となります。
・・第2部からでもOKなのは、結局は第1部の論述の多くを取り入れているからです・・
・・それでは・・
◎「学習論」(中高生 小学高学年生 OKだろう)
「第2部・・その1」
・・中高生の人は、第1部を飛ばして、ここから参加してもいいですよ・・
第1部のブログで述べたことは理論的なので、この2部ではそれを易しく説明します・・
今日のブログ・・「思考力について考える・・その1」
さて,皆さんは、学校で、「習得から活用へ」という言葉を聞いたこともあるかも知れませんが、それはどうして叫ばれ始めたのでしょう。そこから考えてみます。
1:まずは・・
◎「活用の道とは・・」
1つには、それが、現在の世界状況の中で、先進国が進んでいく「知の活用」の道だからです。日本も、約30年前から、この先進国の道を歩み始めました。それまでは、欧米先進国のマネをしていた時代でした。その頃の学習は「習得」を中心にしたものでよかったのです。そして、その頃の一般的な製品なども、比較的単純なもので、「素材物体」としての製品でした。しかし、現在は違います。身近な例でも分かるように、現在の製品は、物としての「もの」ではなく、アイディアとか知的な高度技術とかが作り出す「高度物体」なのです。ロボットもそうだし、パソコン・スマホ、さらには、化学繊維や農作物の品種改良物もそうです。
ある作家(「境屋太一」)が、数十年前に予測した「知価革命」が今起きているのです。これは、ある意味ではチャンスで、土地も資本も持たない人でも「頭」があれば起業できる時代なのです、が、別な見方からすると、その「頭」の差が目立ってくる時代なのです。だから、現在が「学習の時代」となっているのです。
2つには、私達の脳の発育が、幼い頃の「習得」から10歳頃からの「活用」に移行するからなのです。この発育は、現人類誕生からの法則ともいえるものですが、それがなぜ、今になって急に叫ばれ出したのでしょう。それは、民主化が進んで、一般人も「活用」する頭になることが可能となったからです。これまで、永いあいだ、権力者が支配する社会であったため、一般人には「活用」は抑制されてきたのです。教えられたことを「習得」させておけば、仕事だけはするので、そこに留めておこうとしていました。「活用頭」にすると、反抗し始めるからです。ただ、特別な才能がある人や特権階級で自由に「頭」が使える人たちの中からは、「活用頭」になって、工芸や建築で素晴らしい作品を作り出す人も出てきました。文科系では、高度な思想や宗教を創作しました。現在でも、千年以上前の建物や作品に驚くような技能の宝があるのも、その時代の「活用頭」の人たちの活動があったからです。さらに、文科面でも、未だに、仏教や儒教、古代ギリシャ哲学、詩歌や書などでも古代人の「活用」が生みだしたものですね。・・そう、もちろん文字も彼らが作りました。
こうした昔の才能と地位に恵まれた人たちと同じ状態に、現代人(正確には、先進国の人)の多くの人が置かれることとなりました。ほとんどの人が、一定の「習得」を終えると「活用」へと移行できるよう、知識はあふれ、学校や塾・本やネットなどで指導者や組織と出会う機会にも恵まれる時代なのです。本来の、人間の脳のルールに沿った活動が保証されてきているのです。
◎「活用頭の使い方」・・問題に挑戦してみよう
1:次の分類問題に答えよう。
①「花の分類」・・次の分類はどれが一番むつかしいか・・
a:季節による花の分類 b:花の色分け c:価格による分類
d:贈答花の選定
「ヒント」 現象での分類か本質での分類か ・・
②「魚のネーミング」で次のうち一番容易なのは・・
a:鱈 b:鰯 c:鯖 d:鮭
「ヒント」・・これも、現象は?本質は?・・での分類
○「解説・解答」 ・・高校生には易しすぎるか・・
①「花の分類」答え・・d またはc(d=分析が2つとなる・・花の性質分析・相手の気持ち・状態分析、c=買い手「市場状況」の分析・・その後それらを相関させ、結びつけるので)・・易しいのはb(目に見える色分けだから)
②「魚のネーミング」・・c(色での命名・・「現象」) dはむつかしい(他の魚との比較した性質で弱い、また、腐りやすく日持ちが弱いとの理由もあるとのこと・・「やや本質」)
*「活用頭」の最初は、「探究」すること=それはそのことを掘り下げて「分析」すること・・です。この探究で、そのことの「基本・本質」が分かれば、そのことを成り立たせている「ルール・法則」がつかめるので、そのルールを使えば「活用」ができることとなるのです。分析して基本を知って分類すると間違わない。そうでないと、単純な類似で分類してしまう。(例:サメとイルカは同 じとなる)・・・学習が進むと・・ 「現象系(見た目など)の分析から本質系(しくみ)の分析へ」が可能となる。
*「現象と本質」・・この2つの違いを見分けることができるようになると、脳が成長して来ているのです。
2:それでは、もう1つ次の問題に挑戦してみよう。
「ネコに小判」という言葉がありますが、もし「ネコに秋刀魚」ならネコはどうするか・・当然、前者はネコは食べられないし、使えない、後者は食べられる。・・
①それでは「小判と秋刀魚」とどう違うのか考えてみよう。
「ヒント」・・次の語句を使ってみよう・・「抽象」・「具象」、「直接」・「間接」
②それではネコの能力がどこまで高まればいいのだろう・・人間では何歳頃の能力までになるのか。
「ヒント」・・小判が何匹かの秋刀魚に変わることが分かるのはいつ頃だろう
③同じような諺に「豚に真珠」がありますが、やや意味合いが違います。その違いを説明すると・・
「ヒント」・・ネコの何を問題としたのか、豚の何を問題としたのか
○「解説・解答」
これも、現象と本質に関わる問題です。小判は、抽象物で間接的なものです。直接には食べられませんが、秋刀魚と交換できます。それが分からないから「ネコ」なのです。人間は、「抽象」と「間接」が理解できるようになるのは10歳頃かな。でも、貨幣の発達史を見ると、物々交換からはじまり、小判の登場までには時間がかかっている。その後の「不換紙幣」までにはさらに道のりがあります。背後に「金銀」の保証付きの「兌換紙幣」を経てからですから・・「活用頭」もそう簡単にできたわけではないのですね。・・この貨幣の道のり(ルール)が分かれば、「ビットコイン」の本質も分かりますね。さて、最後の2目の諺ですが、「豚に真珠」はその見た目での「現象」だけを述べたものですね。この諺ではあまり賢くはなれませんね。
・・・ここで休憩(「コーヒーブレイク」)しましょう・・
2:次には・・・
◎「活用する頭のしくみは・・」
さてそれでは、次の「図式」を見てください。難しそうにみえますが理解すれば簡単です。・・難しくみえるのは、特に中学生(小学生はもちろん)には、知らない言葉も多いですから・・でも、10歳を超えた脳は、少しづつ、むつかしい言葉も理解すれば分かる段階になってきていますから・・こんな言葉も理解できるように脳を鍛えましよう。・・「理解すれば簡単」といったのは、この「図」は、私達の学習の働きを説明したものだからです。生まれてから、今日までの10歳~15歳までに、頭の中ではこのような学び方の変化が起きているのです。
*「図」
「習得段階」
まずは、とにかく習得です。子供がいろいろなものに興味を持って、いろいろしているには、それが何かを知ろうとしているからなのです。それが、この図の左側の「昇りの道」です。一番最初は、それが危険かどうか、次には、それは食べられるかどうか・・等々の生存に関わることの学習。・・その後には、どうしたら自分の欲求や気持ちを伝えることができるかどうか・・等々です。この「直接体験」からの学びが始まりです。その後、成長すると、聞いたり、読んだりしたことからも学んでいきます。この「間接体験」の方が、直接体験よりも広くて、深いことも分かってきます。学校時代を迎えます。
「習得から探究へ」
そうすると、たちまちに「知識量」が増え、その整理が必要となります。はじめは、時間や場所での整理・・「昨日のことと今日のこと」「学校のことと家のこと」などの整理です・・が、次第に、もっと意味のある分類が必要だと気づきます。・・「遊びの時の服と学校の時の服」「大人との話し方と友達との話し方」などなどです・・具体的な物事を、それなりの「ルール」によって分類し始めるのです。10歳を超えた頃からは、この「ルール」の発見が新たな学習となります。これが、これからの「学力」となります。適切なルールを見つけ出して新しく得た知識を分類しながら整理するのが学力となります。その時には、より適切なルールを持つことが大切なこととなります。そして、そのルールは、「覚える」ことで得るのではなく、「理解」することでしか持つことはできません。覚えただけでは、他の事例に適用できません。適用できないルールはルールとして機能しません。この時の、頭の働きは「帰納法」(きのう・induce)のやり方で動いています。・・帰納法とは、いろいろな事例の中にある共通の事例をつなげて一定のルールを見つけるやり方です。・・例えば、「空を飛ぶ鳥には皆共通して羽尾を持つ」とか「朝から元気な子供は共通して朝食を毎朝食べている」などや「暮・幕・墓・・に共通の草冠に日は何だろう・・日暮れだ・さらには隠れるということか」と発見することです。
ただし、その時に、単なる「類似」だけで共通だとするのではなく、もっと分析をして、その「しくみ・構造」から理解することが重要です。それが、精度の高い「ルール」なのです。そうでないと、「海に住んでいるからイルカは魚類だ」となります。このような誤りを避けて、一定のそれなりに信頼できるルールを発見したら、それを中心にして知識を結びつけて「知の構造・しくみ」(「仮説・FW:フレームワーク」)を獲得したことになります。
「ルールの学習・FWでの整理の段階」
現在では、自分でこのルールを見つけ出さなくても、このルールや知の構造そのものを、学校授業や書籍やネットを通して学ぶことができます。・・自然科学・理科的にはそれなりの多くのルール・法則があります。・・私は、文科系なので、この領域は弱くて入れません。地理学習での「FW」のところで幾分か自然科学的なことを述べますが、その程度ですので、ここは、それなりの科学や理科の専門家の人や先生に学んでください。・・
文科系的には、歴史事例から多くの「FW」を学ぶことができますし、「四字熟語」などや「短歌・俳句」などは文科的思考の「FW」のかたまりといえるでしょう。・・例えば「面従腹背」には、強いものに逆らえないときには従ったフリはしているが、心(腹)の中では背いているのだという人間心理のルールがあります。・・この時に、最重要なのが、この「FW・知の構造」を覚えるのではなく、面倒でも理解しておくことです。多くの生徒・学生がこの時の理解をサボってしまい、その後の学力が伸びない状態となっています。・・それが次のシートにある「Aさんの例」です。
さて、こうした「FW」をたくさん持つと、それを整理棚に収納しておきます。この棚の知識は、「FW」として「知の構造」となっていますのでかなり膨大となっても収納できていますし、引き出すときも、関連がある糸口から整理されたものが出てきます。
*「図」
「活用の段階」
さて、めでたく適切な「FW」をたくさん持つことができると、今度はそれを使う場面です。もちろん、その途中にも、現在の「FW」を修正・改善して新しい「FW」にしなくてはならないことも多くあります。というか、私達は、いつも学習していますから、学びが深まると賢くなってきて、新しい「FW」を学ぶ機会もあります。また、そもそも全世界的に「FW」が変えられることもありますから。そうして、より適切な「FW」を持ってくると、新しく出会ったことや知識に対して、その「FW」を適応して、それを解明・解決しようとします。これが「活用」の段階です。図では、右側の「下りの道」です。これは、「演繹法」(えんえき・deduce)という思考の道です。・・「演繹法」とは、「繹」(糸巻き)から糸を「演」(引き出す)という意味で、「FW」のルールを引き出して、この事例に対してどう対応するかを考えることです。・・例えば、「空を飛ぶものが羽を持つ」のなら「あの飛んでいる虫も羽を持っているだろう」と推理することですし、「あの子は毎日朝食を取っているので、朝から元気だろう」と仮定すること、さらに「草冠に日・・このルールからすると、砂漠の漠は水が地下に隠れてしまうことなのか」と想定することです。・・もちろん、現実には、こんな単純な演繹の推理では解決できないことが多くて、何回もさまざまな「FW」の適用の仕方を考えてみることとなります。
そして、このような思考法ができることとなると、知識を学ぶ姿勢が違ってきて、その知識を他の知識とつなげようとして共通の糸を発見し、「FW」を作ろうとします。単純な知識の暗記だけでは終わりません。ですから、学校授業でも、この姿勢の生徒・学生はよく質問します。質問がないという人は、単純「習得」段階だということです。先のAさんも、学習とは「受容」(覚える)することであり、問うことではないと思っていたのです。もう少し早く、彼女がこの「学習のプロセス」を理解していれば良かったのにと悔やまれます。・・10歳頃からは、学んだことを問いながら、考えながら、覚える頭になってきているのですから。
ここで、今日のブログは終わります。次回の「学習論」では、この「知のしくみ・FW」の具体について学習し、「FW」を読み解いたり、つくったりできるようになりましょう。